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琵琶湖博物館収蔵品ギャラリー

私の逸品

学芸員里口 保文(層序学)

虫生野火山灰の軽石

写真上と下は同じ軽石を異なる方向から撮影したもの

 軽石というのはもともと火山の爆発的な噴火で火山灰などと一緒に出てくるもので、火山灰の粉々になっていない塊り、と考えたらいいでしょう。火山灰は粉ですから遠くまで飛ぶものもありますが、軽石はふつうあまり遠くまで飛ばず、特に写真のような直径が6cmもある軽石は、火山体の近くに落ちます。
 しかし、この軽石はちょっと欠けてしまっていますが、6cmもあるのに関わらず、古琵琶湖層の中頃にある虫生野火山灰と名付けられた約240万年前の火山灰の中に入っていました。単純に考えれば、火山の近くに落ちている軽石が入っているということは、その当時には火山が近くにあった、となってしまいますが、この軽石をよく見ると角が取れて丸くなっていることから、流されてきたと考えられます。特にこの軽石は、水に浮くので、ある程度の深さと水流があれば、割合遠くから流されてくるだろうという予想もつきます。また、虫生野火山灰自体をよく研究すると、遠くから運ばれてきたことが示唆されるので、少し離れたところで大規模な火山噴火があり、そのあと、この軽石が流されてきたのでは? と考えさせられます。
 火山が近くにない滋賀県でも見つかるこの軽石からは、いろいろな想いを巡らされます。



表紙の写真
古琵琶湖層



 琵琶湖博物館A展示室にある「古琵琶湖層」のはぎ取り標本です。
 古琵琶湖層は、三重県伊賀上野盆地から近江盆地にわたって広く分布する、約400万年前から40万年前に堆積した地層です。
 この展示は、雄琴駅北東部に分布する約70万年前の地層です。河川やその周辺で泥や砂が堆積し模様を描いています。

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