主査 桑村邦彦(水産生物学)
やかん、風船、エプロン、へルメット、バット、鈴、雨傘、防毒マスク、マネキンの首……これらの共通点はなんでしようか? 答えは案山子が身につけていたものです。案山子はご存じのとおり、田んぼや畑にやってくる鳥や動物を追い払う、人の形をしたものです。しかし、もともとは田んぼにおける神事として崇られた人形であったり、毛髪やネギ、ニラなどの悪臭のでるものを焼いた臭いをかがして(これがかかしの語源のひとつと言われています)動物や、邪気を追い払っていたものだと言うことです。
琵琶湖博物館では地域の身近な情報を報告していただくフィールドレポーターと言う参加型調査を行っており、昨年はタンポポ、ホタル、そして案山子をテーマに調査を行いました。フィールドレポーターの皆さんには、地元の田んぼを歩き回り、車で滋賀県中を調ベ、また旅行先からも案山子をレポートしていただきました。それでは集まった情報からわかったことや写真を紹介しましよう。
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案山子のイメージどおり、やはり73%が田んぼで見つかりました。あと畑22%、果樹3%でした。道案内をしている案山子もありました。 |
案山子は男性ばかりだと思っていましたが、今回の調査では男性45%、女性34%と女性の割合が予想以上に高く、案山子の世界も男女の共同参画が進みつつあります。子供の案山子も5%ありました。 |
骨組みは木、竹、わらの自然物が74%を占めていました。体は骨組にわらやぼろぎれを巻き付けたもの57%、骨に直接服を着せたもの29%で、あとはマネキンやビ二一ル人形などでした。 |
マジックなどで顔を書いたものは25%でしたが、その内「ヘのへのもへじ」は3%ほどしかありませんでした。一番多かったのが「のっぺらぼう」で33%、帽子を乗せただけ25%でした。マネキンの首だけや防毒マスクをかぶった案山子もあり、人間も逃げだしてしまいそうです。 |
最近の案山子は贅沢になり、いろいろなものを身につけています。背広、着物、シャツ、作業着、エプロン、スカート、ワンピース、合羽などを着て、表わら帽子、野球帽、日除け、へルメットをかぶり、サングラス、ベルト、靴、軍手、棒、雨傘、てぬぐい、買い物袋、鈴などを身につけていました。
ふだんは風景の中にとけ込んで、あまり気にとめない案山子ですが、フィールドに出て注意深く見てみるとさまざまな発見があり、また興味もわいてきます。最後に注意をひとつ。調査をしていて、案山子と人を間違えたというエピソードが多くありました。