Go Prev page Go Next page

●研●究●最●前●線●

ミジンコが湖を変える?

学芸技師 芳賀裕樹(湖沼代謝学)

 琵琶湖博物館では、平成9年度から「沿岸生態系」に関する総合研究を開始しました。この研究は多様な生物が住む環境、魚や鳥たちの『ゆりかご』としての沿岸を保全するために必要な情報、生物の分布や生物どうしのつながりをしらべようとするものです。その中で私は「水草帯のミジンコ」に注目しようと思っています。この研究は平成11年度以降に始める予定ですので、今回はどんなことを考えているかを紹介したいと思います。

水草帯のミジンコとは?

マルミジンコ(の仲間)。琵琶湖の代表的な付着性ミジンコ

 ひとくちにミジンコといっても種類はたくさんありますが、今回扱うのは枝角類とよばれる、いわゆる『ミジンコ』の仲間です。この仲間は透明な殻をかぶっており、エビやカニなどと同じ甲殻類に属します。殻の中にはエラをかねたろ過装置があり、これで水中の粒子(主に植物プランクトン)を集めて食べています。ミジンコが水中の粒子を集める力は思いのほか強く、条件がよければ比較的大型のミジンコ一匹で一日に70mlほどの水をろ過することができます。ミジンコの数はだいたい1lに10匹以下ですが、時には100匹を越えることがあります。ということは、普通でも一週間以内、数が多いときには数時間で周囲の水をすべて一回はろ過できる計算になります。ミジンコが水を濾過する能力が、植物プランクトンの増える速さを上回れば、水はしだいに澄んできます。

 さて、水草帯にはどんなミジンコがいるのでしょうか。水草にくっついたり、そのごく近くを泳ぎ回わるミジンコ(付着性ミジンコ)の代表格はシカクミジンコやマルミジンコで、フナの稚魚のエサとしてはもっとも重要なミジンコです。これらのミジンコは主に水草の表面にくっついた藻類(付着藻類)をはがして食べるので、水中に浮かんでいる植物プランクトンを減らす効果はあまりないかもしれません。シダは日本ではあまりみつからない種類のものですが、琵琶湖では比較的よく見られます。このミジンコは背中の吸盤で水草にくっついたり、水草の周囲を泳ぎ回りながら植物プランクトンなどを食べています。ですから、水の透明さにも影響を与える可能性があります。

 ひとくちにミジンコといっても種類はたくさんありますが、今回扱うのは枝角類とよばれる、いわゆる『ミジンコ』の仲間です。この仲間は透明な殻をかぶっており、エビやカニなどと同じ甲殻類に属します。殻の中にはエラをかねたろ過装置があり、これで水中の粒子(主に植物プランクトン)を集めて食べています。ミジンコが水中の粒子を集める力は思いのほか強く、条件がよければ比較的大型のミジンコ一匹で一日に70mlほどの水をろ過することができます。ミジンコの数はだいたい1lに10匹以下ですが、時には100匹を越えることがあります。ということは、普通でも一週間以内、数が多いときには数時間で周囲の水をすべて一回はろ過できる計算になります。ミジンコが水を濾過する能力が、植物プランクトンの増える速さを上回れば、水はしだいに澄んできます。

オナガミジンコを正面から見たところ。実はオナガミジンコやカブトミジンコは「ひとつ目」なのです

 さて、水草帯にはどんなミジンコがいるのでしょうか。水草にくっついたり、そのごく近くを泳ぎ回わるミジンコ(付着性ミジンコ)の代表格はシカクミジンコやマルミジンコで、フナの稚魚のエサとしてはもっとも重要なミジンコです。これらのミジンコは主に水草の表面にくっついた藻類(付着藻類)をはがして食べるので、水中に浮かんでいる植物プランクトンを減らす効果はあまりないかもしれません。シダは日本ではあまりみつからない種類のものですが、琵琶湖では比較的よく見られます。このミジンコは背中の吸盤で水草にくっついたり、水草の周囲を泳ぎ回りながら植物プランクトンなどを食べています。ですから、水の透明さにも影響を与える可能性があります。

 カブトミジンコやオナガミジンコなどの遊泳性のミジンコは、普段は水草群落のすぐ外側か、もっと沖合いにいることが多いようです。ところが、プランクトン食の魚が多い場合には、食べられないように水草群落の中に逃げ込みます。遊泳性のミジンコが集まれば水草群落の中の植物プランクトンは減りますが、この効果は水草の生えている面積が全体の20%を越えると急に現われるようです。さらに、遊泳性のミジンコは魚に食べられにくい夜間に群落の外の植物プランクトンを食べに出かけます。このことについては、デンマークの小さな湖でLauridsenさんたちが面白い発見をしていて、そこでは、全面積のわずか3%を覆う水草帯に、湖全体の植物プランクトンを食べつくすだけのミジンコが集まっていたそうです。

カブトミジンコ。遊泳性。植物プランクトンのつまった消化管が緑がかって見える。おなかのあたりのもやもやしたものがエラ。ここでプランクトンを集める

何を調べたらよいか

ミジンコの頭部です

 まずはミジンコ達が活躍しそうな場所探しです。南湖は全域、北湖では内湾が候補に挙げられます。

 次にミジンコの数や種類が水草群落の発達につれてどのように変化するかを知る必要があります。次はミジンコが水中の粒子を集める力(速度と、集められる粒子の大きさ)を実験で調べます。そのためにはおなかの中を見たり、特殊なビーズを食べさせてみる方法が考えられます。種類や数、食べる速度がわかれば、ミジンコが植物プランクトンをどれくらい減らしているかを推定することができます。また、遊泳性のミジンコについては水草群落の中と外を比較すれば、群落に逃げ込んでいるかどうかがわかります。夜に群落の外へ出て行くかもしれないので、夜の観測も必要です。

 水草帯のミジンコの数や種類が違えば、同じ栄養度の湖でも水の状態は変わってきます。琵琶湖では窒素やリンの流入が増えた(人為的富栄養化)ことで水質が悪化しましたが、同じ時期に魚の種類や数も変化しています。魚が変わったことでミジンコの数や種類が変わり、水質にも影響を与えてきたかもしれません。ミジンコに影響を与えそうな魚はブルーギルですから、その食性を調べて琵琶湖に昔からいた魚と比較することで、魚の変化と水質の関係が明らかになるでしょう。昔からいた魚とブルーギルを、それぞれ別の実験池に放流してプランクトン組成の変化を見ることも考えています。

 さて、ミジンコ君(本当は女性ですが)たちの活躍はいかに。結果は次の機会にお伝えします。



表紙の写真

(ミジンコの頭部)
 表紙の写真は、カブトミジンコというミジンコの頭部を拡大したものです。写真右上にある丸い部分が目で、彼(彼女)らには目が一つしかありません。(本文中の写真でも解説しています。)このミジンコは遊泳性で、琵琶湖にひろく分布しています。

-5-

Go Prev page Go Prev page Go Next page