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特集

[Letユs be fishermen! Planning a program for visitors.]

展示室をもっともっと使おう!「漁師修行の旅」

学芸員 芦谷美奈子(水生植物生態学)

 「1・2・3!」のかけ声で、投網を投げる子ども達。そのうちに、見学していたお父さんが一緒になって投げ始め、最後はお父さんの方が目をキラキラさせながら懸命に取り組む…なんていう風景が、あちらこちらで見られました。実は、これ、去年の十一月から今年の2月にかけて琵琶湖博物館で行った「漁師修行の旅」という常設展示を横断するプログラムのひとコマなのです。

常設展示を利用したプログラム

 琵琶湖博物館では、昨年度に文部省の親しむ博物館事業の委嘱をうけて、展示室を使ったプログラムを企画実施し、実際にたくさんの子ども達に参加してもらいました。このプログラムは「漁師修行の旅」といって、展示室を巡る「旅」を漁師の修行になぞらえたものです。

 このようなプログラムを企画しようと思った理由は、ふたつあります。一つ目は琵琶湖博物館の常設展示の大きさで、二つ目は同じような内容の展示がいくつかの展示室に分散していることです。

 まず一つ目ですが、広い面積を持つ常設展示は、全部を見ようとするとかなりの時間が必要になり、調べてみるといくつかの展示コーナーがあまり見られていないということがわかりました。そこで、あまり利用されていない展示コーナーを、もっと使ってもらえる方法はないものかと考えたのです。

 二つ目は、たとえば「魚」についてはA展示室とC展示室、「漁師」についてもB展示室とC展示室に別々に展示があります。くり返し見てもらえる効果はあるものの、間に他の展示を見るとどうしても内容がまとまって伝わりません。そこで、つまみ食いをするような形で特定のテーマについて深く知ってもらおうということになりました。

 そして、テーマを漁師にしたのは、なんといっても琵琶湖の漁業を支える仕事で、博物館の「湖と人間」というテーマを代表する内容だと考えたからです。

「漁師修行の旅」はどういうのだった?

 それでは「漁師修行の旅」について簡単に説明しましょう。実施した期間は、平成11年の11月13日から平成12年2月13日までで、日曜日や第二第四土曜日、祝日などに計22回行いました。対象は四才から小学生までの子ども達。事前申込みの必要がない、時間制限もないようなフリーエントリー式にしました。

 まず修行はディスカバリールームで受付をすることからはじまります。参加者は、ここでカバンに入った修行キットと赤い帽子を受け取り、「おとも」というガイドブックを片手に修行を開始します。展示室には、もとからある展示を利用して修行用の展示物を追加し、プログラム参加者に楽しんでもらえるように工夫をしました。

 どの展示室から見るかは自由ですが、それぞれの展示室ではあらかじめ決められたテーマにそって修行をします。たとえばA展示室では「魚をきわめよ」というテーマで、琵琶湖に古くから生息していたコイの仲間を取り上げ、魚拓のように魚の形をクレヨンで擦りだしたり、キットの中の標本の名前を展示を使って調べ、コイの咽頭歯について学んだりしました。B展示室では「魚をとる道具をきわめよ」という修行で、アユをとる漁具を展示の中から探し出したり、C展示室では「漁師のわざをきわめよ」ということで、琵琶湖のエリの形をゲームのように理解したり、漁師さんが自分の場所を知るために行うヤマテ(ヤマタテ)を体験したりしました。

 他にも、水族の企画展示室では人が入れる巨大タツベがあったり、外で実際に投網を投げてみたり、双眼鏡で湖岸のエリを観察したり、とても盛り沢山な内容でした。

参加者に貸し出したキット

さあ、箱が開くかな?

どんどん展示室を使おう!

 参加してくれた子ども達は、延べ844人にもなりました。中には、二回目、三回目の強者も。追加した展示物は常時設置しておくわけにいかないので、プログラムを実施する前の日に、夜遅くまでかかってスタッフが展示をセットしました。より楽しくなる工夫を常にしたのはもちろんですが、修行につかう箱の鍵の番号をリピーターのためにその都度変更したりもしました。

 常設展示を通常の見方とは違う内容で利用する試みは初めてだったので、いろいろな試行錯誤がありました。実際にやってみると、思っていたように上手く行かなかったり、運営がなかなか大変だったり。でも、あまりの人気にスタッフは嬉しい悲鳴をあげっぱなしでした。

 今回は試みということでアンケートを実施しましたが、そこで頂いた様々な意見の中で特に多かったのは、このような展示室をつかったプログラムをもっとやってほしい、というものでした。そうですよね。あんな大きな展示室を一通り見学するだけでは、もったいない!!

 残念ながら、「漁師修行の旅」は一旦(?)終わってしまいました。でも、今は具体的な計画はないものの、これからも展示室をどんどん使って、子どもも大人も何度でも楽しめるような仕掛けをしていきたいと思っています。こんなテーマいかが?なんていうのがあれば、どしどしご提案ください。

「1・2・3」のかけ声で投網を投げる子どもたち

箱をあけると中にはコイの解剖模型が…

さあ「漁師の家」にあがって調べものだ!

これは何をとる漁具だったかな?

終了後の認定式。きみも今日からびわ湖の漁師さん!

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