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 九月中頃のことでした。東京に出かけていて遅くなり、一泊しようと思ったのですが、何とか帰れそうなので、家まで帰ってきました。今まであまり意識していなかったことなんですが、今回はなぜかそのことが、頭のなかにしっかりと焼きついてしまいました。

 東京を出たのが夜の八時頃で自宅に着いたのが十一時過ぎでした。東京では夕刻にもなるとビルの合間を車や勤め帰りの人が大変多く流れていました。あいにく雨も降ってきて、なぜか時間の割には暗く感じました。その時、近くでエアコンのきいた快適なビジネスホテルでゆっくりと疲れをとりたいと思ったのですが、家にたどり着けそうな新幹線の指定席が取れたので、思い切って帰ってきました。帰ってみると、雨は降っておらず二階の寝室は北から南に吹き抜ける風で自然の冷房がきいていて、家のそばにある川の流れの音が聞こえ、それに加えて秋の虫の音までが聞こえてくるではありませんか。毎日暮らしている自分の家なのに、このときばかりはなぜか「このすばらしい快適さはいったい何なんだ!」と問いかけずにはいられませんでした。

 どんな性能のいいエアコンも自然の風にはかなわないし、どんな性能のいいオーディオも自然の生の音にはかなわない。普段住み慣れているところなので、今まではあまりその快適さに気がつかなかったのです。頭のなかに東京の余韻が残っているまま家にたどり着いたので、その違いが強く印象づけられました。

「自然環境を大切に!」とよく言われますが、以外と足下の身近なところに守っていかなければいけないものがあるのではないでしょうか。

 (内藤)




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