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館長との対話

中学生・高校生が博物館に望むこと


2001年1月21日(日)琵琶湖博物館・館長室にて

司会■琵琶湖博物館 中川 修(教育学,中学生対象,理科)
編集■琵琶湖博物館 森田光治(教育学,高校生対象,理科)

ビワマスとニゴロブナ

中川■きょうは、中学生・高校生という若い世代のみなさんが、いま考えたり感じたりしていること、将来についてなど、いろいろ聞かせてほしいと楽しみにしてます。その前に館長の川那部さんからひと言。

川那部■私は京都生まれの京都育ちで、アユの調査から始め、ずっと川や湖の生物を調べてきました。京大を定年で退いてすぐこの博物館へ来たのですが、「湖と人間」の関係を扱うという理念に沿って、以前から好きだった文化的なことも考えに入れ、魚をめぐるさまざまな問題を調べてます。
 とりあえずいま考えているのは、ビワマスを、江戸時代の俳人の句にもあるように、博物館の目の前でとって食べたい。それから私の子どものころと同じく、ニゴロブナのふなずしをこれもたくさん食べたいので、そうなるにはどうすればよいかということです。
 ところで、ふなずしは好きですか。

阪本■私は食べられます。

田中■私はちょっと苦手です。


(守山高等学校2年生)
安井  彩 さん
田中亜由子 さん
衣笠友美子 さん
岩澤 佳奈 さん

琵琶湖博物館で好きなところは

中川■琵琶湖博物館へ来たことはどれほどありますか。

安井■私は近くの下物町に住んでいるんですが、申しわけのないことにじつは中学校のときに一回しか来たことがありません。琵琶湖の子なのにいちばん印象に残っているのは、何年も前の洗濯機やテレビの並んでいるところでした。

田中■家族で二回、中学生のときに一回、そして高校では理科の実習で来ました。展示室の地層の中にペットボトルとかが残っていたのが、すごい印象として残っています。

衣笠■私も理科の実習で来ました。また、いとこなどといっしょに来ることもあって、きょうで五回目ぐらい。見るだけでなく体験できるから楽しいし、いとこたちもそう言っています。

岩澤■ここへは一回だけ来たことがあります。泳いでいるビワコオオナマズがいちばん印象に残っています。
 高知から転校してきたのですが、琵琶湖が汚いのを見てショックでした。湖での遊びも、いろいろあるけれどももう一つおもしろくありませんしね。

大西■去年の夏、一日学芸員として初めて来て、三回目になります。琵琶湖や滋賀県についていろいろ知ることができて、すばらしいところです。
 将来はアナウンサーになりたいんですが、自然のことなどもいろいろと紹介していきたいなと思います。

阪本■小学校のころから何度も来ています。最初のときに印象に残ったのはザリガニのある場所でした。それ以後自由研究でも来ました。
 将来は国立公園のレンジャーになって、自然を守っていきたいと思っています。

原■琵琶湖博物館には、今まで自由研究などでも来て、小学校のときをあわせると、きょうで五回目になります。お父さん・お母さん時代の生活用品などの置いてあるところがいちばん好きです。


館長 川那部浩哉

琵琶湖そのものを調べる

川那部■琵琶湖博物館は、建物の中で知識を得るだけではなく、湖そのものを調べるきっかけになることも願っているのですが、そういうことも教えてもらえませんか。すぐ北にある赤野井湾を調べた人もいるそうですね。

衣笠■放送部の大会で、琵琶湖を取材して全国に発表するため、自主的に湖を守る活動をしているグループのイベントに参加しました。赤野井湾へはそのときに行きました。水質の現状を聞いたり、疑問に思っていることなどをインタビューしました。

田中■地学の授業で、琵琶湖について調べる課題が出ました。気候と災害、また人々の暮らしと水質などを調べて、夏休みあけに発表しました。

衣笠■私も神奈川から引っ越してきたんですけど、大津で魚がいっぱい死んでいてショックでした。しかし赤野井湾は、少しずつだけどよくなってきていると聞きました。南湖の中にもきれいなところと汚いところがあるとか、ちょっとずつきれいになっているところがあるとか知って、すごく印象に残りました。

田中■小さい頃、琵琶湖のいろんなところに泳ぎに行って、場所によってきれい汚いがずいぶん違うなと思いました。でもふだん使う水道水は消毒されたきれいな水なので、どの程度琵琶湖が汚れているのかあまり認識はできないです。

岩澤■夏の渇水のときには、藻がすごく臭くて、あんまり近寄りたくなかったです。

大西■五年生のときにフローテイングスクールがあって、琵琶湖の水質調査をしたのですが、すごく濁っていました。ずっと滋賀県に住んでいるんですけど、それで琵琶湖のイメージが悪くなりました。

川那部■一九六〇年代前半に、琵琶湖に関する詳しい調査があったのですが、そのころ北湖の水は沿岸でもそのまま飲んでいましたね。それがだんだん汚くなっているのは、確かな事実です。

衣笠■赤野井湾の取材で思ったんですが、教室で聞いただけでは理解しにくいことでも、琵琶湖に行って体験してみるとわかります。そして、これからどうしていかなければならないかを考えることが、大切だと思いました。

阪本■私が小さいころは、近くの川でコイがよく釣れていたのに、いまはブラックバスとかブルーギルとかが増えてきて、つまんないと思うようになりました。コンクリートで固められていることもあって、いまの川はあまり好きじゃないです。両親の実家の近くの川では泳ぐのですが、野洲川ではちょっと泳ぎたくないです。

川那部■蛇行していた川をまっすぐにして、そのうえ、陸と川とを完全に分けてしまいましたからね。

阪本■きれいなだけの川じゃなくて、生き物のたくさんいる川がよいのだと思います。生きものからいろんなことを学べるし楽しい。透き通っているほうがよいとは限らないので、プランクトンがたくさんいるような、少し濁った池などが私の望みなんです。

川那部■その通りですね。それにいまは、この川もあの川も同じ感じになってしまいました。川も湖岸も、場所ごとに独自なものであることが大切です。そのためには、教科書を読んでいるだけではだめ。外へ出て、それぞれの違いを知らなければなりません。


(甲西北中学校2年生)
大西 佑季 さん
阪本いぶき さん
原  矩子 さん

琵琶湖博物館に望むこと

中川■それでは最後に、「博物館でこんなことができたらよい」というような話もまじえながら、ひと言ずつしゃべってもらおうかな。

安井■せっかくこんないいところがあるのだから、もっと何度も来て、いろいろと琵琶湖について知りたいと思います。

田中■さっきも話が出たけど、自分で琵琶湖がどのくらい汚れているかを見ないとわからないので、資料だけではなくて、実際にどの程度汚れているかがわかるような、そういう展示があればいいなと思います。

衣笠■私もやっぱり実習とかで、実際に琵琶湖の水などを見られるような機会が、いっぱいほしいです。

岩澤■これまでは琵琶湖に来る機会があまりなかったので、南湖のほうしかあまり見たことがないんですよ。さっきこの琵琶湖にはいろいろな場所があると聞いたので、広くて行けないにしても、そういう写真をいっぱい見られたら楽しいなと思いました。

大西■今まで琵琶湖について深く考えたことがなかったけど、今年の自由研究で琵琶湖や生物のことをいろいろ知りました。もっといろんな発見ができるような博物館であってほしいと思います。

阪本■私たち三人で一日学芸員などの行事に出たけれど、すごく楽しくて、新しい発見もありました。そういうのが増えたら、もっとみんなにも伝わるかなと思います。

原■阪本さんも言いましたが、子ども一日学芸員で博物館の裏とかが見られて、とてもよかったです。そういうことがあれば、また来たいと思っています。

川那部■水槽には多数の魚が泳いでいますが、あんなに魚がかたまっているところは、琵琶湖にはほとんどないのです。またたいていの場所は、あんなに水は透明ではない。だから、琵琶湖の沿岸の水はこれぐらい濁っているとか、魚の個体数はじつはこの程度に少ないとか、そういう展示も必要だと思っています。だが個体数を減らすのはともかく、濁った水を水槽の中で保つのはたいへんなのです。
 きょうは話してもらったわけですが、あなた方のほうから、「こんなおもしろいことができないか」「こんなことを調べてみたい」などと、積極的に提案してください。すべてに対応できるかはわからないけれど、できるだけ受け入れて、作り直したいと思っています。
 地下の標本室には、地質でも生物でも民俗的なものでも、資料がたくさんあります。それも自分で使いながら、いろいろ野外で調べて、その結果をまた琵琶湖博物館の発展に使ってほしいものです。まずは日曜日あたり、あるいは春や夏の休みに、琵琶湖や川や田んぼなど、外を調べ、考えてくださるとたいへんうれしいことです。
 きょうはどうもありがとう。

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