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特集

琵琶湖博物館と学校のいい関係!?

主任主事 中川 修(教育学:中学生対象:理科)

 春・秋の平日のある日、琵琶湖博物館に足を一歩踏み入れると……”カン、カン、カン……””ドン、ドン、ドン……”とディスカバリールームから楽器の音が響き、「あっちの方、行こう! おもしろそうやで」「こっちも楽しそう」「体験学習が始まるー」などとあちこちからざわめきが聞こえる。ふとアトリウムを見ればそこにあふれかえる子供、こども、コドモ……。「ここはいったい何? 博物館?」「なんてにぎやかな博物館なのだろう」と思われた方も多いと思います。そう、琵琶湖博物館は修学旅行、校外学習のシーズンになると毎日、いくつもの学校が出入りし、多くの子どもたちが楽しむ場所になるのです。

増えつつある学校団体の利用

 琵琶湖博物館が開館して、はや五年目。その間、県内外はもちろん遠く海外からも多くの来館者があり、昨年十一月には総来館者数が三百万人を超えました。そのうち学校団体として来館する子どもたちの数は約三十四万人で来館者全体の一一%になります。各校種別に見た内訳は小学校が五四%、中学校が二七%、高等学校が一九%で半数以上が小学校です。
  学校団体の利用は年々増えつつあり、この三年間だけを見ても全体に占める割合はいずれも増大傾向にあります。しかし、小学校・中学校・高等学校に分けて比較してみますと、小学校が飛躍的に増加し、中学校がやや増加、高等学校は減少していることがわかります。平成十四年度から小中学校で実施される「総合的な学習の時間」との関連で、今後ますます地域の特性を生かした博物館の利用が増加することが予想されます。

博物館利用のいろいろなタイプ

 学校団体が博物館を利用するタイプにはいろいろなものがあります。これを大きく分けると次のようになります。
(1)展示見学タイプ
  修学旅行や校外学習など比較的短時間(一・五~二時間)で来館される場合で、展示見学が中心のものです。学校によってはワークシートなどを利用される場合もあります。グループ行動をされる学校が多く、子どもたちは五、六人で館内をまわり、楽しみながら学習しています。
(2)概要説明+展示見学タイプ【グラフ参照:概要】
 ホールやセミナー室で一五~三〇分間程度「博物館の見どころ」などについて博物館職員の話を聞き、その後展示見学をするものです。
(3)自校教員実施タイプ【グラフ参照:自校】
  各学校の教員が中心となって体験学習を展開されるものです。博物館のプログラムを事前に研修した後、当日各学校の教員が体験学習を実施されるものがほとんどですが、博物館職員・学芸員のアドバイスを元に学校独自のプログラムを作成し、体験学習を実施される学校も増えてきています。中学校、高等学校ではこのタイプの利用が多くなってきています。
(4)体験学習+展示見学タイプ【グラフ参照:体験】
  展示見学のほかに、実習室や生活実験工房などで一時間程度の体験学習をするものです。琵琶湖博物館は展示室を見てまわるだけでも充分楽しく、学習もできるのですが、さらに自分の手で何かを作ったり、自分の思い通りに観察したりすることで、琵琶湖に興味をもってもらうきっかけになればと考え、実施しています。「プランクトンの採集と観察」「化石のレプリカ作り」「ヨシ笛作り」「わら細工」などのメニューがあり、子どもたちは目を輝かせ、一生懸命に体を動かし、五感をフルに躍動させながら活動しています。
(5)ミュージアムスクールタイプ【グラフ参照:MS】
  平成十・十一年度にモデル事業として行った「びわ湖・ミュージアムスクール」で開発した子ども用学習支援プログラムにそって学習を進めていくものです。このプログラムは博物館職員・学芸員が学校教員と協力して、琵琶湖博物館の理念である「湖と人間」というテーマに基づいて環境学習が進められるように作成したもので、体験的学習の場である博物館での探究活動に加えて、学校での事前・事後の学習にも学芸員が参画してより深まりのある学習成果を期待するものです。一つの学校に多くの学芸員が参加するため、現在のところ受け入れることがむずかしいのが実状です。
 最近の傾向としては、特に(4)体験学習+展示見学を希望される学校(特に小学校)が前ページのグラフのようにたいへんな勢いで増えてきており、今後もこの傾向は続くであろうと思われます。この体験学習には、今のところ三名の博物館に所属している教員が中心となり実施していますが、校外学習シーズンともなると非常にあわただしく、少し時期をずらして来館してもらうと「もっとゆったりと体験してもらえるのに」とうらめしく思ったこともあるほどです。対応しきれない時は各学校の引率教員とも相談して、ところどころ協力してもらいながら実施しています。
 今後はさらに進んで、各学校の教員に博物館のプログラムを理解していただいた上で自分の学校の子どもに合わせてアレンジし、実施していく(3)自校教員実施タイプをすすめていこうと考えています。

博物館と学校のこれから

 博物館と学校はもともと学習の進め方やその目的、考え方も違います。連携して何か活動をはじめようとするたびにうまくいかないことも多々ありました。けれどもあきらめてやめてしまうのはあまりにももったいない。博物館の持つ豊富な資料・展示、学芸員の知識・専門的でありながらも面白い話を生かさない手はありません。そして学校の教員が持つ一つの題材をいかに効果的に取り組ませるかという工夫の仕方、子どもに応じた支援のテクニック。それぞれの長所を生かして博物館の活用を工夫すればきっと子どもにとって魅力的で効果的な学習ができるはず。
 琵琶湖博物館でより多くの子どもたちと先生が、ニコニコとして一心に自分のやりたい学習を進めていけるように、これからもいろんな活動をすすめていきたいと考えています。


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