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 Goin' at Field! フィールドへ出よう!

年輩の人の話を聞いてフィールドに飛び出そう
~昔の生き物について知ろう(びわ湖・ミュージアムスクール学習より)~

主査 横山 泰史(教育学:小学生対象:理科)

 「昔の生き物」って、何でしょう? アンモナイト、サンヨウチュウ? ここでの「昔」とは、「おじいさん、おばあさんが子どもの頃」のことです。つまり、「昔の生き物」とは、昭和20年代から昭和30年代に子どもたちがよく見かけた生き物のことです。
 これは、「びわ湖・ミュージアムスクールモデル事業」というびわ湖博物館の事業の一つとして行いました。博物館と学校が連携しながら子どもたちの体験活動を進める生き物中心の環境学習で、地元の常盤小学校の5年生が対象となりました。
夏休みの自主学習や博物館体験学習の学芸員の話の中に、昔の常盤学区での生き物と人々のくらしのことがありました。ナマズが大雨のあと田んぼで手づかみできたとか、淡水養殖真珠が盛んであったというような話を聞くと興味を示していたので、事後学習として、地域の年輩の人から話を聞くことにしました。
小学生の学習記録より
 学芸員や校長先生、社会福祉協議会会長さんから紹介いただいた方7人にお願いしました。初めはみなさん「昔のことなので、忘れた」とか「小学生に話してもわからないやろな」というようにためらっておられました。持っていった昔の地図や写真を出すと、だんだん思い出してこられたのか話がはずんで、最後には家にある昔の道具とか写真とかを出してこられるようになり、あっという間に、1、2時間が過ぎてしまいました。私としては、7人なので、2日あれば回れるかと思っていたのが、1週間かかってしまいました。
 当日、イケチョウガイやモンドリでとった魚や真珠や昔の釣り道具や写真を持ってきていただき、身振り手振りを交え、熱心に話していただきました。遊びイコール生き物つかみであったり、つかんだ魚は、おかずになっていたことや田舟に乗ってヘビがたくさんいた烏丸半島に農作業にいっしょに行ったことや海水真珠をモデルに淡水真珠を開発してきた苦労話など琵琶湖と共に生きてこられた話を聞かせていただきました。子どもたちも博物館の職員も先生方も時間を忘れて聞き入ってしまいました。単に知識を学ぶというだけでなく、人の生き様や生き方を学ぶことができたような気がします。
  話し終えたときの表情は、何か胸のつかえがおりたようなとても良い表情をされていたような気がします。推測ですが、「しゃべりたかったんだなあ」と感じました。
 このように、ふるきをたずねて新しきを知るというか、昭和30年代まで、琵琶湖やその周辺の自然と人々はうまくつきあっていたという実体験を今の子どもたちに伝えていくということは、将来残すべき自然の姿を模索する上で、大変重要なことだと思います。また、話を聞いた子どもたちが家に帰って自分の祖父母たちからも同じような話を聞いたとか、道で出会ったときに話された方に挨拶をしたとか聞くと、地域や家庭内での心のふれあいという意義もあったのではと思われます。
 科学的に追求していく環境学習も必要でしょうが、それとともに、実体験の聞き取り活動をした後再びフィールドに出たとき、より深まった環境学習になるのではないかと感じるようになりました。

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