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琵琶湖博物館収蔵品ギャラリー

私の逸品

主任学芸員松田 征也(底生動物学)

さかまきの貝

カゴメカワニナ
(左:逆旋個体、右:正常個体)
 
ヒメタニシ
(左:逆旋個体、右:正常個体)

 琵琶湖に生息する巻貝の多くは、右巻の貝殻を持っています。しかし、サカマキガイやヒダリマキモノアラガイなどいくつかの種類については、右巻ではなく左巻の貝殻を持っているものもいます。こうした貝の巻方は種類により決まっているのですが、ごくまれに、本来の巻き方とは逆の貝殻を持ったものが現れることがあります。
 ここで紹介するカゴメカワニナとヒメタニシは、本来どちらも右巻きの種類なのですが、偶然逆巻きの個体を見つけることができました。カゴメカワニナは琵琶湖の湖底に生息する琵琶湖固有のカワニナ科の種類で、殻高50mmにもなる湖内最大級のカワニナです。もう一方のヒメタニシはほぼ日本全国に分布し、県内では河川の中流域から湖岸はもとより、南湖ではほぼ全域にすんでいるタニシ科の貝で、大きなものでは殻高40mmほどになります。繁殖生態はいずれの種類も卵胎生で、卵は雌の体内でふ化し、ある程度成長してからようやく産み出されます。
 今回採集された逆巻きのカゴメカワニナは殻高が5.54mm、ヒメタニシは 5.02mmと小さく、いずれも産み出されて間もない幼貝です。これまでに国内の淡水域で報告されている逆巻きの貝、オオタニシとヌノメカワニナの2種ともに、その大きさから未成個体だと考えれます。なぜ逆巻きの個体は未成貝なのでしょうか。ある研究者は「代々維持してきた体内の左右が逆転すると、形態形成の調和が壊れ正常には成長できないのではないか」としています。これが正しければ、成長過程での不都合から成貝にはなれないと考えられます。しかし、陸貝では、このような逆巻きを利用して進化している種類もあります。淡水貝の世界でもそのようなことがあるかないか、さらなる研究が必要ですが、いずれにしても生物の不思議を感じずにはいられません。



表紙の写真
(琵琶湖の竹生島と夕日)


 琵琶湖の竹生島と夕日の写真の一部です。夕焼けが湖面に反射して縞状の模様となっています。このとき、湖面の波のようすで違った模様となります。
 琵琶湖は大きく、場所によってはまだ自然が残っていて美しい景色のところがあります。写真家のあいだで、風景写真の対象として琵琶湖は、富士山に次いで有名な撮影地となっています。
 たかが風景、されど多くの人は心引かれる。残された自然環境を守っていきたいものです。

撮影地点:湖北町延勝寺
撮影日時:平成8年 秋 夕暮れ
(1Aフィルター使用)
(撮影:内藤又一郎)

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