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琵琶湖博物館収蔵品ギャラリー

私の逸品

主任学芸員 アンドリュー=ロシター Andrew Rossiter(魚類生態学)

チョウザメ


 魚類の中でもチョウザメは数々の記録保持者です。現存する魚の中では最も原始的骨格を持ち、体型は三億五千年前のデボン紀以来、ほとんど変わっていません。チョウザメの多くの種は体長2m以上にも達し、中でもロシアの「ベルーガ」と呼ばれるチョウザメは体長6m、体重1.3tにも達する最大級の淡水魚です。チョウザメはさらに、最も寿命の長い魚で、150年も生きるとされています。見た目は鮫に似ていますが、実は鮫の仲間ではありません。チョウザメという和名の由来は、大鱗が蝶の羽に似ていることから来ています。

 チョウザメについて特筆すべき点は、底生動物食であり、小さな無脊椎動物や小魚を食べるということ、そして歯はなく、吸盤状の口をもっているということです。北半球だけに生息し、成長が遅く、成魚になるのに時間がかかります。たとえば、「レーク・スタージョン」というチョウザメでは、繁殖行動を始めるのは、だいたいオスは15歳、メスは17歳、その後オスは1~2年おきに、またメスは3~8年おきに繁殖行動を行います。このような発達過程からも容易に理解できるように、チョウザメは乱獲されやすく、また回復が大変難しい魚なのです。河川の汚染やダムにより、繁殖場所にたどり着くことが阻まれることも、個体群数減少の原因の一つです。

 カナダでレーク・スタージョンの研究に取り組んでいた頃、私はチョウザメの保全に深く関心を持つようになりました。私の研究現場河川では、多くのチョウザメがダムの水門が開く際、吸い流されてしまっていました。そのほとんどが死に、かろうじて生き残ったものは、水門が閉じた後にできた小さな水たまりに、行き場なく瀕死の状態で取り残されているという状況でした。写真は行き場を失ったチョウザメを救出し、河川に戻している様子です。私はダムの管理者に働きかけ、チョウザメが水門付近にいない時だけ水門を開けてもらえるように説得をしました。

 悲しむべきことに世界で24種、ほぼ全種のチョウザメが絶滅の危機にさらされています。今こそ思い切った対策が急務であり、さもなければ、まったく人間の貪欲と無知の犠牲となって、ほとんどのチョウザメは間もなく絶滅してしまうでしょう。博物館には現在5種のチョウザメが飼育されています。私たちは保全努力の一端として、今後博物館で繁殖させようと考えています。生きた化石チョウザメは私の宝物です。Please come and see them!


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