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特集

[Extinction and Evolution; Fossils in Asia]

第6回企画展示

絶滅と進化、動物化石が語る東アジア500万年

専門学芸員 高橋啓一(古脊椎動物学)

首の短いキリン「シャンシテリウム」

500万年は長いか短いか

 1月15 日~4月11日の間、博物館の企画展示室で「絶滅と進化、動物化石が語る東アジア500万年」の企画展示が行われています。この企画展のタイトルにもなっている500万年は、地球の46億年の歴史からいえばほんの一瞬のできごとにすぎません。たとえば、46億年を1メートルの定規にしてしまうと500万年は1ミリにもなりません。

 しかし、この最近500万年はそれまでのどの500万年よりも意義ある時代であることも確かです。それは、現在私たちが知る限りにおいて約500万年前にアフリカで最古の人類であるアウストラピテクスが誕生したからです。この500万年間は私たちヒトの適応と放散の時代とも呼べます。

琵琶湖地域に太古を探る

 ふしぎなことに私たちが生活をともにし、そして当博物館の研究や展示の対象となっている琵琶湖も同じくらいの古さをもった湖です。この湖は、約400万年前に現在の三重県上野盆地に誕生し、断層の形成と陥没、隆起を繰り返しながら北上し、現在の琵琶湖のようになりました。単時間では変化がないように見える生物の進化や大地の運動というものも長い時間のなかではゆっくりと、また時には急速に変化しているのです。私たちの生活をとりまく時間の単位はあまりにも短く、このような変化に気づくことはありません。ただ、大地に残された地層の様子や化石を通じてのみ変化があったことを知ることができます。

 この点において長い歴史をもつ琵琶湖、あるいはその周辺に堆積した地層からはたくさんの獣の化石が発見されます。これらの中には、現在日本列島ではみられないゾウやワニなどもみれらます。この動物たちは、どこから来てどうしていなくなってしまったのでしょうか。

下顎がシャベル状の「プラチベロドンゾウ」

研究を展示に

 この企画展では、こういった琵琶湖地域の問題をもっと広い視野と楽しい展示で説明することをこころみました。これは、この博物館がおこなっている総合研究の一つ「東アジアの中の琵琶湖、その成立と人間生態系に関する総合研究」の中の特に脊椎動物化石に関する研究の中間成果でもあります。研究は、まだ途中なのでわからないこともたくさんありますが、みなさんもいっしょに問題を考えてください。企画展示では、日本初公開の約70点の中国からの化石が展示されています。

キロテイリウムサイ

展示の紹介

導入部

 今回の企画展示では、全体を本のページを一枚一枚めくるような感じで、説明する演出をしていますが、最初の入口も立てかけた大型の本の中をくぐって入ります。入るとそこは、ある学芸員の研究室の机が大きな写真として引き伸ばされています。その机の上には、古琵琶湖層から発見されたゾウの臼歯化石が置かれています。この琵琶湖地域から発見された化石をどのように研究して、なにがわかっていくのかが展示の中に進むにしたがって明らかになっていきます。

主展示

 導入展示をぬけると、右手の壁面展示ケース内には、「現在の日本の哺乳動物たち」「何度も入れかわった動物たち」「日本列島で絶滅した動物たち」「進化の多様性」「動物化石が語る東アジア500万年」などの展示がパネルや現生骨格、化石骨格などを使って説明されます。そして、現在の日本の動物相が、この500万年間に絶滅や進化を繰り返しながら、何度も入れ代わりながらできあがったことが示されます。

 展示室中央には、本から抜け出したように中国の中新世から後期更新世の哺乳類化石約70点が展示されています。これらは、北京自然博物館の協力を得て展示されたもので、ほとんどが日本初公開のものです。これらの中には、中新世のシャベル状切歯をもっていたプラチベロドンゾウ、鮮新世の首の短いキリンの仲間のシャンシテリウムやシノマストドンゾウ、キロテリウムサイ、更新世の大型のホラアナクマやマンモスゾウなどの組立骨格九点のほか、様々な大型哺乳類の頭骨が展示されています。

ワークショップ

 大きな展示室を抜けると、そこは「どこで、どのようにして化石が発見されるのか」「どのように発掘するのか」など、来館者の知りたいことがわかる展示がされています。また、そこでは実際のクリーニングの様子が見学できたり、ワークショップも用意されています。

会 期


1999年1月15日(祝)~4月11日(日)

場 所


滋賀県立琵琶湖博物館 企画展示室

観覧料


大 人 900円 (700円)
大学・高校生 700円 (550円)
小・中学生 450円 (350円)

 ※( )内は20名以上の団体料金です。
常設展もご覧いただけます。

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