Go Prev page Go Next page

琵琶湖博物館収蔵品ギャラリー

私の逸品

学芸技師 八尋 克郎(昆虫分類学)

ミドリセンチコガネ(オオセンチコガネ)

 琵琶湖博物館では、琵琶湖とその周りの昆虫を収集し、その標本を収蔵庫に保管しています。標本の中に、ひときわ目立つまばゆいばかりの金緑色をした昆虫があります。その正体は、ミドリセンチコガネ(オオセンチコガネ)です。ファーブル昆虫記にでてくる、スカラベと同じ仲間です。この美しいコガネムシが、まさか糞を食べる虫なんて信じられますか。

 下の3つの色の異なるコガネムシは、一見違う種のように見えますが、すべて同じオオセンチコガネという種です。近畿地方には3つの色彩の異なるオオセンチコガネが分布していますが、金緑色の個体が見られるのは、琵琶湖の周りの滋賀県南部(金勝寺、岩間山、飯道山、信楽など)、京都府山科盆地南東部、鈴鹿山地だけです。このようなオオセンチコガネの緑色の「型」はミドリセンチコガネと呼ばれています。奈良県、和歌山県、三重県南部には、ルリ色(藍緑色あるいは藍色)に輝くルリセンチコガネと呼ばれる「型」が生息しています。その他の地域に生息する典型的なオオセンチコガネは金赤色あるいは銅赤色です。このように、近畿地方のオオセンチコガネはあたかも方言のように地方色豊かなのです。

 では、何で近畿地方には同じ種でも色の異なる3つの型がすみわけているのでしょうか? 生息環境の違いによるという説、地史と関係しているという説などいくつかの説がありますが、はっきりとわかっていません。琵琶湖の周りではオオセンチコガネの他にもオサムシ類で、この地理的変異の例が知られています。

 琵琶湖の周りは、不思議で、本当におもしろいところです。

 ミドリセンチコガネの標本はC展示室生き物コレクションに展示しているほか、動物収蔵庫に保管しています。

オオセンチコガネ ミドリセンチコガネ ルリセンチコガネ


表紙の写真

(ミドリセンチコガネの上翅)
 表紙の写真はミドリセンチコガネ(オオセンチコガネ)の上翅を拡大したものです。近畿地方には3つの色彩の異なるオオセンチコガネが分布し、金緑色の個体が見られるのは、琵琶湖の周りの滋賀県南部、京都府山科盆地南東部、鈴鹿山地だけです。オオセンチコガネの緑色の「型」はミドリセンチコガネと呼ばれています。
 ぜひ博物館に見に来てください。

-4-

Go Prev page Go Prev page Go Next page