Go Prev page Go Next page

琵琶湖博物館収蔵品ギャラリー

私の逸品

主任学芸員 宮本 真二(微古生物学・花粉化石)

須恵器の椀


私事で恐縮ですが、この須恵器は私の故郷の兵庫県氷上郡市島町の鴨庄古窯群・上牧8号窯付近で採取したものです。15年前頃の中学生の時、友人と高速道路の建設工事で山際が掘削されている時に偶然発見したものです。それまで状態のよい遺物にめぐりあうことが少なかったので、手にしたときの感動は今も色あせていません。

 後で知ったのですが、以前にこの付近は遺跡の分布調査が行われていて、この須恵器は8世紀前半のものであることが報告されています。下に復元図を描いてみました。高台の外面はロクロ回転によるヘラ削り調整が行われており、接地部は全面です。底部内面は2次的なナデをほどこさず、ロクロ回転によるナデのみです。

 私は田舎で生まれ育ったので、田んぼや山で遊ぶことが日常的でした。そんな遊びで、古墳や窯跡を探していました。中学生頃になると色気ついてきて、いっぱしの考古学者気取りで奈良の明日香村などにも遠征して遺物を集めていました。

 この須恵器は、研究者を志した逸品とまではいきませんが、きっかけのひとつになったことは確かです。

 今では、考古遺跡は当時の遺跡の立地環境の復原のための研究対象ですが、この「衝動」をおさえるのにとても苦労します。


-4-

Go Prev page Go Prev page Go Next page