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 Goin' at Field! フィールドへ出よう!

タンポポからみた
足下の自然

総括学芸員 布谷 知夫

 1993年に博物館準備室として第1回目の参加型調査にあたるタンポポ分布調査をおこないました。初めての調査にたくさんの方に参加していただくにはどうすればいいのか。考えた結果は、一番あたりまえの方法で、たくさんのチラシを作り、県内の図書館や公民館、郵便局や銀行にまでお世話をかけてチラシを置いていただきました。


タンポポから何がわかるのか

 タンポポには昔から日本にあった在来種と、明治時代になって日本に入ってきた帰化種とがあります。

 在来種のタンポポは日本全体で約20種類ほどありますが、その個々の分布域は狭く、ほとんどその分布域を変えないという特徴があります。またその生息環境は、田んぼの畦や農道のわきなど、いつも草刈りがされ、同じように手入れが繰り返されているような場所です。

 それに対して帰化種のタンポポは、分布域を広げやすい性質がありますが、在来の植物が茂っている中には入っていかず、工事などでいったん裸地になった場所に入ってきます。そのため、どちらのタンポポが生えているかを見ると、逆にその地域は最近に人手が入った場所がどうかがわかります。

在来種と帰化種のタンポポの見分けかた

 20種ちかくある在来種を見分けるのは難しいのですが、在来種か帰化種かを見分けるのは簡単です。タンポポのなかまはキク科で、花と普通に呼んでいるのは、小さな花がたくさん集まったものです。その小さな花を二重に包んでいる苞(ほう)とよばれる部分の外側がまっすぐな花が在来種、そっくり返っている花が帰化種です。そのことを知っていれば簡単に見分けることができるので、参加者自身に見分けてもらい、花をつんで封筒に入れて当時の博物館準備室に送っていただきました。じつは調査の参加お願いの用紙はそのままアンケート用紙になっていて、線にそって切り、のりではれば返送用の封筒になるようになっていました。

調査結果

 考えていた以上にたくさんの方の協力を得ることができ、県内の4,252地点からの情報と、あわせてすべての市町村からの報告をいただきました。結果は県内全体でいうと、送っていただいたタンポポの数は6,375あり、そのうち黄色い在来種は3,240、シロバナタンポポは534、帰化種は2,531、タンポポ以外の花が70という結果でした。在来種はシロバナタンポポを加えると60%、シロバナをのぞいても56%が在来種という数字でした。この結果を滋賀県内をメッシュ(網の目)にきって、個々のメッシュごとに表現してみました(右図)。

 この数字は、例えば大阪府でおこなわれた同じ調査の数字と比べると、在来種がまだまだ多いという結果です。けれども、1973年に当時、京都大学の堀田満さんが湖東と湖南で同じような調査をした例があったので、その時のデータと比較してみようと思ったためなのですが、その時のデータと比較すると、圧倒的に帰化種が増えているという結果でした。

 このような調査は繰り返しおこなうことで、環境の変化を知ることができます。今後も琵琶湖博物館の調査の一環として、何年かおきにタンポポ調査をしてみようと考えています。

・・・在来種のみ
・・・在来種のほうが多い
・・・帰化種のみ
・・・帰化種のほうが多い

 現在、琵琶湖博物館では「春をさがしてみませんか」というテーマで、春らしさを感じる生物や行為について調査をしています。こんなことをしているのを見たら、あるいはこの生物を見たら春がきたな、と感じるものを教えてください。

ハガキか封書でお願いします。

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