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どこでも博物館

台湾虫紀行

学芸員(水生昆虫学) 桝永 一宏



 7月上旬に台湾中部山岳へナガレアシナガバエ属Diostracusの調査に行きました。本研究は日本、台湾、中国の研究者との共同研究で、今回は台湾東海大学の大学院生と一緒に調査をしました。
 ナガレアシナガバエは、北米と東アジアに隔離分布し、生息環境は主に冷温帯から暖温帯の山地の渓流という限定された場所です。起源は古く、第三紀に北半球に広域分布していたものが、第四紀の氷期にそれぞれの大陸で山伝いに南下し、山地の渓流で生き延び、このような隔離分布になったものであろうと考えられています。しかし、このハエの化石を得るのは困難で、このことを証明するのは難しいことです。そこで、現在のハエの分布とそのDNA塩基配列を用いた系統解析により、分化時期・分散経路・生息環境を推定しようと考えています。これにより、遠く離れた台湾の山奥のハエと日本のハエの歴史がつながり、身近なハエの壮大な歴史が実感出来ることでしょう。

合歓山(標高3417m)。ナガレアシナガバエは水飛沫のかかる石の上にいる



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