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琵琶湖博物館収蔵品ギャラリー

私の逸品

主任学芸員 考古学 用田 政晴

安土瓢箪山古墳出土の壺の小さな破片

 「私の逸品」というタイトルには、私は2つの点で反発を覚えます。1つは、これが博物館の資料を指すなら、資料は県民のもので、決して個人の所有ではないはずです。またいかなる資料もそれぞれに意味があり、資料に優劣をつけるべきものではないというのが2点目です。しかしながら、編集者の意向によりあえてあげるなら、キャラメル1粒ぐらいの大きさの土器の破片を紹介したいと思います。

 安土瓢箪山古墳は、近江で最大最古の前方後円墳と言われます。かつて、琵琶湖の内湖に突き出ていた全長130m余の古墳は、湖上一円の交通を支配していた有力者の墓であると考えられます。発掘は行われたものの細かな築造年代は不明でしたが、この壺の破片を20年ほど前に友人の乗岡実さんと歩いていた時に墳丘斜面上で発見して、近江最古であるもののそんなに古い古墳ではないと判断しました。

 細かく難しい話になりますが、「壺の口縁端部を若干つまみ上げながらもやや肥厚気味に処理している」と当時は観察しました。時代決定の有力な根拠となる甕の特徴を壺に移してみたものですが、副葬品の時代的な特徴からもそんなに違わないものだと思います。

 最近、考古学の成果による相対年代の枠組みは大きく変わらないものの絶対年代は古くなりつつあります。このことから、3世紀中ごろに大和盆地東南部に出現した強大な前方後円墳体制に、湖上交通を支配した近江の有力者が組み込まれたのは、4世紀になってからと考えるに至った小さな土器の破片です。

 ちょっとマニアックでしたでしょうか。この破片を復元した断面図を掲げておきます。

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