琵琶湖博物館研究調査報告第36号が刊行されました
2023年に登録無形民俗文化財に登録された「近江のなれずし製造技術」の多様性と歴史的、地域的な特徴を明らかにした『琵琶湖博物館研究調査報告36号 日本列島を中心とした魚介類消費の研究』がこの度刊行されました。
これは琵琶湖博物館の共同研究などの成果で、柏尾珠紀さん(滋賀大学)、岩永紘和さん(京都大学)、橋本道範(琵琶湖博物館)の3人が執筆しています。琵琶湖博物館共同研究「フナズシの歴史的位置付けについての研究Ⅱ―「古フナズシ」の再現実験―」(2022~2024 年度:研究代表者 橋本道範)では、琵琶湖地域のフナズシの歴史を世界の歴史のなかに位置づけるため「世界ナレズシデータベース」(505件)を制作し、なれずしの多様性を明らかにしました。また、室町時代の貴族の日記による「中世魚介類データベース」(691件)の制作によって、室町時代から戦国時代の貴族社会における魚介類の消費実態が解明されました。上記のデータベースはこの研究調査報告に掲載されているものです。
なお、この成果は、4月の琵琶湖博物館研究セミナーでも報告されます(研究セミナーについては、琵琶湖博物館の web ページ
https://www.biwahaku.jp/event/2023/04/20231.html をご参照ください)。
【近江のなれずしとは?】
魚を塩とコメなどのデンプンで乳酸発酵させた発酵食品です。今回の研究成果により、滋賀県には海産魚 4 種類と琵琶湖の固有種をふくむ淡水魚など 18 種類のなれずしが分布しており、長期の塩漬けと飯漬けをするものが多いこと、塩漬けの時期は冬と春が多く、飯漬けの時期は夏が多いことなど、他の地域にはみられない特徴があることが解明されました。
【報告書の目次】
第一章 柏尾珠紀「データベースからみたナレズシの特徴と多様性」
第二章 岩永紘和「『言継卿記』に見る一六世紀の魚介類消費」
第三章 橋本道範「日本産淡水魚消費論に向けて― 一四世紀から一六世紀の首都京都を対象として―」
【J-STAGE での公開】
上記の 3 つの論文は、日本の学術ジャーナルを発信するオンラインプラットフォームである J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/)で公開されています。
【販売】
・販売先:ミュージアムショップおいでや(琵琶湖博物館館内)
営業時間:10:00~16:30
電話・メールでも注文できます。
Tel:077-568-4846
お問い合わせ | ミュージアムショップ おいでや (oydeya.com)
・価格:790 円
【共同研究に関連するフナズシ再現実験について】
上記の琵琶湖博物館共同研究の一環で、江戸時代の料理書(レシピ本)に書かれた製法でフナズシを再現する実験を行っています。
実施中の再現実験の様子は、琵琶湖博物館公式 YouTube「びわこのちからチャンネル」内の下記動画でもご覧いただけます。
「大実験!江戸時代の製法で「ふなずし作り」に挑戦!!」
https://www.youtube.com/watch?v=DWNKnw37FZ0
資料提供はこちら→20230418研究調査報告第36号刊行.pdf